萩高校の同窓会冊子に寄稿・澤野

維新伝心

〜世界視点で地域の価値を変える使命。萩で培った私の3つの原動力〜

 

私は山口県萩市須佐(旧・阿武郡須佐町)の生まれ育ちで、母親、兄弟3人とも萩高出身です。とは言っても私の萩高での成績は常にビリ。あまり学校に行くこともなくなり、結局1つの単位を取ることもできず留年が決定。2年生になることなく中退しました。このちょっとだけ変わった体験が後々自分の1つ目のアイデンティティとなりました。

2つ目のアイデンティティは母の死です。高校中退など、散々迷惑をかけたので、「さあ社会人、これから親孝行をしよう」と思った大学4年時に、母が末期ガンを宣告され急逝。結局、最期まで親孝行をすることは叶いませんでした。

この2つの体験(満たされない思い)が後に自分の原動力になりました。人と違った選択をすることにも勇気が持てるようになったのです。そもそも自分は高校中退(中卒)、失うものはない。また、母は突然死んだ、明日自分にも母のように死が訪れるかもしれない。この2つの原体験を意識すると、リスクへの恐怖を上回るエネルギーが湧いてくるようになったのです。

そして、今、何をやっているか? 私は「ハートランド・ジャパン」(リベルタ株式会社)という田舎専門のインバウンド旅行会社を経営しています。要するに日本の田舎と世界をトラベルでつなげる仕事です。

具体的には、欧米で流行しているアドベンチャートラベルの手法を使って、1)ウォーキングやハイキングなどのアウトドアアクティビティ、2)石見神楽の鑑賞などディープな異文化体験、3)地元の人との交流、に重きを置いたツアーを欧米のお客様に提供する仕事をしています。

そのツアーを通じて萩や津和野のようなちょっと名の知れた観光地はもちろんのこと、自分の故郷須佐を始め、江崎、小川、弥富など、まったく観光地化されていない小さな集落を題材に、漁船に乗ったり、野山をウォーキングしたりするというマニアックな体験を提供しています。実際に世界中の観光客からは、日本の田舎の人とのふれあいはとても楽しかったと高評価を得ています。私たちのふるさとには自然文化という高い価値が、掘り起こされずに眠っているのです。

維新については中学の歴史の授業で初めて意識するようになりました。自分の生まれ育った 山陰のさびれたエリア萩市がこんなに歴史的に価値がある街だったのかと。以降、事あるごとに「自分のルーツは維新のふるさと萩である」ということを意識するようになりました。まさに「維新伝心」。それは、物事を変革するという使命をルーツとして持っているという自分の3つ目のアイデンティティとなりました。

今年はラグビーW杯、来年は五輪。世界視点で見れば田舎は宝の山。外国人目線で地元を見つめ直すと新しい価値がたくさん見えてきます。そんな世界に開かれたふるさとを創りたい。郷土を世界と分かち合いたい。恐らくそれは吉田松陰先生も夢見た世界だと思います。

澤野 啓次郎(萩高校42期中退)

 

【Ehime Kurushima-kaikyo-ohashi Bridges, from Mt. Kiro】【Gunma Carp Streamers, Akaya Lake】【Yamaguchi Farmer in Higashi-ushirobata Rice Terrace】
【Hiroshima Streetscape of Yutakamachi-Mitarai】【Niigata Wakabayashi-tei House】©経済産業省、【表示4.0 国際】ライセンス https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/