大分県の国東半島は神仏習合のふるさととして知られています。日本に元々あった神道と大陸からの仏教が最初に混じり合った場所。また宗教だけでなく、稲作や漢字、石工の文化など、食文化や芸術も大陸と初期に融合した聖なる半島として知られています。
この地域の面白さは、この地域に古くから根付く八幡信仰を辿ることもできるし、山岳仏教となった六郷満山文化を辿ることもできるという点にあります。
八幡信仰は、渡来の神様として崇められており宇佐神宮を総本山としています。六郷満山はこの地域に元々あった山岳信仰と、大陸から伝来した仏教と結びついたり、宇佐神宮を総本山とするその八幡信仰とも融合したりして独特の山岳仏教となって発展していきました。不動明王などの鬼を信仰する独特の地域文化ともなっている点は実にユニークです。
六郷満山では、旧正月(1-2月)に寺院で行われていた火祭り「修正鬼会」(しゅぞうおにえ)が今も毎年執り行れています。しかし、八幡信仰に由来のある行幸会(ぎょうこうえ)は、1300年前(西暦700年ごろ)から6年に一度行われていた神事です。
八幡宇佐宮の新しい御神体「薦枕」(こもまくら)が作られると、古くなった御神体は八幡奈多宮に移されます。新しい御神体を宇佐神宮に運ぶ儀式と、古くなった御神体を瀬戸内海(豊後水道)の八幡奈多宮に運ぶ伝統の神事です。
1,000人とも2,000人とも言われる人々がこの神事の行列に加わり、それをもてなす儀式が至る所で開かれ、いわば地域活性化(イベントや祭りを催し消費の機会を創出する)のような役割も果たしていたと言われます。宇佐宮に関わりの深い、八箇社(8つの八幡宮)を巡る、いわば御神体の巡礼の神事です。
そして、古くなった御神体はご利益にあやかろうとする各社に分納されていったそうです。八幡信仰がそうして四国や全国にひろがっていったことを考えるロマンが湧きます。また八幡神は渡来の神様だと考えると、これまた話はグローバルになります。この地域には姫島という島があり、その所以は朝鮮半島から結婚を逃れてきた姫が住み着いたことにあるそうです。
朝鮮半島が近いだけにそれだけ結びつきが深かったのでしょう。
残念なことにこの神事は1616年を最後として行われることがなくなりましたが、昭和に一度だけ略式で復活して執り行われましたそうです。しかしながら、経済的な問題や人的リソースの問題で、それを最後に行幸会が行われることはなくなりました。
この度、ハートランド・ジャパン(リベルタ株式会社)は、当地のDMOである豊の国千年ロマン観光圏からお呼びいただき、その行幸会のルートをサイクリングで辿るサイクリングの商品を造成することになりました。
総距離:160km、所要時間:3日間、上り・下り:ともに1630mというアドベンチャーになります。
道中は八箇社はもちろんのこと、行幸会にまつわる人と出会いながら、行幸会でふるまわれた料理を食べながら、行程を進んでいきます。
なんと来年の2025年は宇佐神宮開山1300年だそうです。こうした地域に残る神事を次世代に継承していく役割を私たちは担います。ツーリズムの役割とは、こうしたストーリーを体験を通じて伝承していくことだと考えています。