
島根県
島根県観光連盟様(ご担当:錦織様)
公益社団法人島根県観光連盟の活動
公益社団法人島根県観光連盟は、島根県における観光産業の振興を図り、観光を通じて地域の活性化に資することを目的とし、観光客の誘致促進、観光に関する情報の収集及び提供、イベント等の実施等、本県の観光を総合的に進める組織として、県の観光施策と連携しながら様々な事業を実施しています。
石見事務所は令和6年4月に開設し、地域内の関係機関と連携を図りながら石見地域(島根県西部)の広域観光の振興に取り組んでいます。
島根県観光連盟様 インタビュー
伝統行事を継承していきたい

今回のお題は鷺舞でした。日本の神事などの伝統行事は危機に瀕しています。年に一度しかお披露目の機会がない日本の祭などの伝統は特別感がある一方で、いつでも楽しめるわけではないので旅行会社の売上的なメリットにつなげるのが難しいと言われています。また、神事であるが故に、その受け皿となる実行団体側からも「神に捧げる神事なのだから安易に売り物にはできない」などのハードルを設けられることが多いという課題があります。その一方で島根県としては津和野に400年以上にわたって残るこの伝統神事をなんとか次世代に継承したい、子の価値を広く伝えたいという考えがあり、伝統文化に造形が深く、欧米圏に販売チャネルを持つハートランド・ジャパン(リベルタ株式会社)に相談することになりました。
リベルタさんが島根にお越しになってお話しする機会があった際、地域の目立たないけど意味がある行事を素材にして伝えていこうという姿勢を持っておられることを感じ、それは頼もしいと感じました。鷺舞はまさにそれにあたるものでしたので、これは業務をぜひ依頼したいと思いました。
写真映えなどだけではない目に見えないストーリーをしっかり伝えるということをやっておられる。そこがハートランド・ジャパンのいいところだと思います。
また代表の澤野さんは山口県の須佐出身で、津和野と近いので共感を持っていただきやすいという点も依頼した理由の一つでした。津和野には実際にインバウンドのお客さんが増えてきているという背景もありますので、その機運に乗せてローカルの魅力がしっかり伝えていけたらいいなと考えています。
商品企画とモニターツアーの実施
今回は鷺舞を題材とした商品を造成するため、実証実験としてモニターツアーを実施しました。そのモニターに参加いただいたアメリカなど欧米圏出身の5名の皆さんには、津和野や鷺舞について、表面的なものだけでなく、伝統行事を守り、担ってきた方々に対する敬意を持って地域の魅力も十分に感じていただけたと思いました。「とても感動した」という言葉をもらったことで、これは海外の方々にも通用するコンテンツなのだということを実感させられました。
英文記事と動画での情報発信
モニターツアーの中でも皆さんの地域の伝統行事に対する思いをお聞きしましたが、参加者の方々が書いてくれた英文の記事を読んであらためて認識できたことも多く、日本の地域が直面する少子高齢化、過疎化、人口減少、担い手不足、伝統の消滅などの社会課題をツーリズムの力を使って解消の一助とできる、そんな可能性までも感じることができました。また、皆さんが撮ってくださった写真も地域の魅力が伝わる素晴らしいものだと思いました。
動画についても観光関連のスタッフが「センスがいい!」と言ってくれるなど高い評価を得ることができました。ハートランド・ジャパンに商品造成からモニターツアーの実施、情報発信まで一連の業務を委託できてよかったと思っています。
ハートランド・ジャパンの圧倒的な強み
日本の伝統文化への造詣が深いことや、地域に思いを持って業務に取り組んでくださる点はもちろんですが、なんと言っても海外に豊富な販路を持っているからこその説得力にその強みをお持ちだと思います。日頃から欧米圏の顧客とやりとりして、その嗜好性を知っているからこそのアドバイスはとても勉強になりました。
また旅行会社として13.5万人泊(2023年度)の実績があるからこそのインバウンド市場のリアリティも把握されています。市場に対してどう地域の資源を打ち出したらいいか、その手法はとても参考になりました。今後、インバウンドツーリズムがゴールデンルートなどの一極集中から地方分散に移る中で、そういった地域に送客する取り組みは、ますます求められていくと思います。
地域の伝統を継承すること、地域に外貨をもたらすこと、この2つのハートランド・ジャパンのミッションには共感していますし、それを実践している姿にいつも感謝しています。
もう一つ、津和野の関係者と関係を作っていくというプロジェクトの最初期のところから入っていただけた点がよかったと思っています。現場で経験を積んでいるハートランド・ジャパンの人員というだけあって、地域の関係者の方々との関係構築もとてもスムーズでした。事業ですので、ビジネスでやられているという点もあると思いますが、それだけではなく、伝統行事を守っている人の立場になって親身になってくれていました。地元の人たちとの信頼構築に不安があったのですが、それは杞憂に終わりました。結果的に商品まで造成でき、かつWEBサイトへの掲載までお願いできてとてもよかったと思っています。
モニターの人選やフィードバックへの対応

ジェイク、サンディ、キャロライン、ジュリア、ブランダンという5名にモニター参加をしてもらいましたが、その人選もよかったと思います。
「真夏の中での浴衣が暑すぎた」「浴衣を着ている人は他にいなかったのになぜ浴衣を着るのか?」というネガティブなフィードバックに対しても、「次はこうしよう」などと、しっかり振り返りの時間を取ってもらえた点もよかったと思います。記憶が新しいうちに率直なフィードバックや改善策について議論できた点はとてもよかったと思います。
また鷺舞自体は、スローで静かな一見して地味なパフォーマンス(厳かな神事)ではありますが、一同「素晴らしかった」「感動した」「自国の神聖なお祭りを思い起こして心が動いた」とのコメントを得られました。日本人にとっては普通のこと、地味にさえ感じるようなことが、外国人にとっては「特別」な体験となるカルチャーギャップ。それが地域を“宝の山”に変えるというインバウンドの原点をあらためて感じさせられました。
一気通貫の対応
モニターツアー企画立案~モニターの招請〜ガイドのアサイン〜手配〜実施~WEB記事化、動画化〜商品化〜商品販売、ツアー催行など、最初から最後まで一貫したサービスの提供がハートランド・ジャパンに支援していただける点がありがたいです。
日頃実務をやっているからこその「生の情報」は世の中には出回っていないので、事業を通じて、そうしたリアリティに触れる機会が持てたこともとても有意義に思っています。プロの目線がまだまだ地方には足りていないので、これから学んでいく必要があると考えています。
今後の展望
石見地域はアクセスの悪さや宿泊施設の問題があると言われていますが、そういうことに関係なく、「来ていただければ十分に魅力は伝えられる」という再認識を得られました。伝統文化に対する意識は、日本と欧米とでは違いがあります。津和野や島根などではない「外からの視点」を以って、地域資源を見つめ直してみれば、地域の自信につながる、収益以上の価値がある、観光振興は地域振興。そういう意味で、地域が持続するための経済価値以上のものがインバウンドの取り組みをすることで得られるということもまざまざと実感できました。
ありのままこそが資源
新しく作り直さなくても伝え方を工夫することで魅力は伝えられる。その原則をモニターツアーを通じて感じました。共感していただけるストーリーの発掘、丁寧な対応、コンテンツを褒めていただけたことで私たちの自信になりました。
「津和野の最大の強みは、そこに住む人々と、彼らの文化や伝統に対する情熱」とスタッフのアメリカ人の方が言っておられました。地域住民との交流にも価値を感じていただけるなど、ありのままの姿に、日本人よりも外国人の方々の評価が高い点も新たな気づきのポイントでした。正直「ニーズが強いなぁ」と感じました。これまでは観光の主役ではなかった皆さんも主役になれる、大事なキーマンになれる。そんな、すごくいい経験がみんなできたと思っています。
澤野さんの熱量もすごい。率直に言っていただけるので学びにもなります。
今後も地方のインバウンドについてはハートランド・ジャパンに相談させていただきたいと思っています。
ハートランド・ジャパンの制作支援
動画制作
外国人によるモニターツアーの様子を撮影して動画を撮影。一年に一度の祭事「鷺舞」をハイライトに、地元の酒造や郷土料理の体験などを地域に暮らす人々にも光を当てながら「小さな城下町のお祭りを地元民のように楽しむ」目線で紹介。ツアー体験者の新鮮な驚きや感動が伝わるコンテンツに仕上げました。