【アンコンシャスバイアス】インバウンド旅行者への無意識の思い込みや偏見に注意!やりがちなNG例も紹介

インバウンドが活況に入り、2025年1月〜3月の3ヶ月間では、訪日観光客数が1000万人を突破した。
日本を訪れる外国人観光客は年々増加の一途を辿っているが、インバウンド観光客を迎える側である日本人の対応には、課題がある。
アンコンシャスバイアスに基づく、不用意な言動もその一つだろう。

海外からのリピーターを増やしインバウンドをさらに活性化させるには、アンコンシャスバイアスを理解し、外国人観光客への対応を学び直す必要がある。
この記事では、アンコンシャスバイアスの基本的な知識と、具体例や対策を紹介する。

1.アンコンシャスバイアスとは何か

アンコンシャスバイアスとは、無意識に持つ偏見や思い込みのことを指す。

 

【例】

  • 買い物やサービスに対してお金を払うのは男性
  • 箸を使うのはアジア人だけ

 

アンコンシャスバイアスは、自分が育った環境や文化に加えて、かつて見たり聞いたり、感じたりした経験から、自分でも気づかないうちに形成される。

その結果、他人や事象などを「〇〇だから××だ」と無意識に思い込んでしまい、ときに失礼な態度や差別的な言動につながる。

 

 

2.インバウンド観光客へのNG対応例

ここからは、日本を訪れるインバウンド観光客に対して、意識せず行ってしまいがちなNG言動と行動例を紹介する。

自分もやっているかもしれない、という不安がある人はぜひ、自分の言動や行動をチェックしてみて欲しい。

 

2-1.外見に由来するNGな言動と行動例3つ

海外の多くの国では、外見を話題にするのは非常に失礼な行為とされている。

生まれ持ったものにケチをつけている、と思われてしまうことが多く、相手の気分を著しく害するからだ。

 

1)肌が白くて素敵ですね、羨ましいです

 

日本では肌の色が白いことが美しいとされることが多い。

しかし、外国ではそうではない国も多々あることを意識しよう。

特に肌の色への言及は、人種差別に繋がりやすく非常にデリケートな話題となるからだ。

また、欧米の一部の人たちの間では、日焼けをしていない肌を「お金がなくてバカンスにどこへも出かけない人」と揶揄する向きもある。


「何か特別なお手入れをしているのですか?きれいな肌ですね」など、相手がやっていそうな行動を褒めるなど、肌そのものよりも本人の行動を褒める言葉の方が相手の心に響く。

 

2)小顔で羨ましい!モデルみたいですね

顔が小さいことを褒めるのは逆効果。

「顔が小さいと頭が小さい、つまり脳味噌が少なくて頭が悪そう、と言いたいの?」と思われることがあるからだ。

同様に、「鼻が高くて羨ましい」「目がぱっちりしていて素敵ですね」など顔のパーツを褒めているつもりの言葉も失礼に当たる。


外国人モデルのような西洋的美しさへの憧れ、褒める気持ちをこの言葉に含めているつもりでも、相手にとっては賛美の言葉に聞こえないことを知っておくと良い。

 

3)年齢を聞く

(年齢は)おいくつですか?と聞くのは、多くの国であまり意味のあることではない。

 日本を含むアジアの国では、儒教道徳に由来する年功序列の考えが当たり前とされていることがある。そのため、相手に年齢を聞くのは失礼に当たらないが、欧米や中東圏外国にこのような習慣はない。

「なぜ年齢を聞くの?子供だと思ってるから?」と相手の気を悪くさせてしまう日本独自のものだと覚えておこう。

 

2-2.性別に由来するNG例3つ

アンコンシャスバイアスの中には、性別(ジェンダー)に基づくものも含まれる。

女性なら赤やピンク、男性なら黒や青の服が似合うなど性別によって無意識に決めつける、ジェンダーバイアスと呼ばれるものだ。

 

1)同行者を「ご主人」「奥様」「ご友人」と呼ぶ

外国人旅行者に対し、男女二人連れを見れば夫婦か恋人、男性二人連れもしくは女性二人連れなら友人同士、と思い込んで対応してしまった経験ははないだろうか。

異性同士の二人連れでも、異性愛者とは限らない。一人が同性愛者の可能性もあるし、友達同士である場合もある。

また、同性同士のカップルで、外国ではオープンに交際をするのが一般的とされ、旅行へ一緒に行くこともある。

見た目の性別でその関係を判断しないように気をつけよう。

 

2)女性の行動力を褒める

例えば、女性一人で旅行する外国人旅行者に「女性一人で日本を旅するなんてすごい行動力ですね」と言葉をかけたとき、複雑に思う人は少なからずいる。

 

女性が一人で何か行っていることを評価する言葉の裏側には、「か弱い女性は一人で行動すべきではない(あるいは、できるはずがない)」と言う女性蔑視的な思い込みがある。

そこが相手に伝わってしまうと、「なぜ一人で旅することがいけないの?」あるいは「私のその能力がないとみくびられているのだろうか?」と思わせてしまうことになるだろう。

 

「知らない国を一人で旅するために、いろいろ気を配っているのではないですか?素晴らしい努力ですね」など、性別に関係なく本人が努力している部分にフォーカスした話題にすると良い。

 

3)店に来た客の性別で対応を変える

もしあなたがアパレル店で勤務しているなら、女性客に華やかなデザイン、男性客なら黒や紺、茶色を基調にしたベーシックなデザインなどを勧めたことはないだろうか。あるいはあなたがレストランのソムリエであるなら、注文したワインのテイスティングを男性や年配客に依頼した、ということがあるだろう。

 

しかしこのような対応も、アンコンシャスバイアスに通じかねないので注意が必要だ。

「女性なら華やかなものを」「支払いは男性か年配客だろうからテイスティングはあの方に」というそれぞれの性別に特有の性質や役割があるだろうという無意識な思い込みが根底にあるからだ。

まず相手の好みを聞き、それから商品やサービスを勧めるのが本当の意味でのもてなし、と言えることをお忘れなく。

 

2-3.出身国に由来するNGな言動と行動例3つ

会話の中で、相手がどこからきたのかを聞くことは誰もが無意識にすることだろう。

しかし、自分が持つ相手の出身国へのイメージで、相手を「こういう人だろう」と思いこむ危険性もある。

 

1)⚫︎⚫︎からいらしたんですか、それなら⚫︎⚫︎でしょうね

相手の出身国に対するステレオタイプなイメージから、相手の嗜好や趣味、身体的特徴や能力を決めつけていないだろうか。

たとえ、話のきっかけとして振った話題のつもりでも「⚫︎⚫︎人だからこうだろう、と決めつけないでほしい」と思われ、不愉快にさせることがある。


ブラジル出身でもサッカーに興味がない人や、アメリカ人でもハンバーガーが好きではないという人、ジャマイカ人でもレゲエよりロックが好きだという人は、当然いる。


また、身体的特徴や能力でいうならば、ケニア人であっても走るのが遅い人もいれば、北欧出身でも背が高くない人がいる。ロシア出身であっても寒さが苦手な人もいる。
出身国に対する日本人の勝手な先入観を持ち出し、それを当てはめた不用意な発言をすることは決してやってはいけないことの一つなので要注意、ということだ。


相手へのリスペクトを示す意味で話題を出すなら、「⚫︎⚫︎からいらしたんですか、一度旅行してみたいと思っているのですが、おすすめの場所はありますか?」など、相手の意見を引き出し会話のキャッチボールが成り立つような話題の振り方を心掛けると良い。

 

2)このゴミは⚫︎⚫︎国や⚫︎⚫︎から流れ着いたものでしょうね

海洋汚染解決は世界的に取り組むべき問題とされていて、日本近海でも流れ着いたゴミが話題になるほどだ。

しかし、日本では海岸に漂着したゴミを見て、瞬間的に「あ、これは⚫︎⚫︎から流れ着いたものだ」「⚫︎⚫︎からだ」などと、国名を挙げて指摘する人がいる。

実際に外国語で書かれたプラスチックの漂流物であれば、それは疑う余地がないだろう。とは言え、文字が書かれたものでもなんでもないものについても、ゴミが漂着したイコール外国からのものだ、と決めつけてしまうきらいが日本人の一部にはある。


私の体験では、その発言をした日本人をイギリス人が「それは言ってはいけない。国名を挙げて批判的発言をするようなことは偏見だからすべきではない。日本人が捨てたものの可能性だってある」と指摘していて、ハッとした記憶がある。

 

このように、ファクトチェック(事実関係の確認)をせず一方的に決めつけた言動も、アンコンシャスバイアスと言えるのではないだろうか。

 

3)日本語が話せることを褒める

「日本語がお上手ですね」を褒め言葉と捉えている日本人は多いかもしれない。

しかし、友人ならともかくほぼ初対面の人からもそう言われたら、当人である外国人からすると違和感を持つことがある。

 

外国人なのに日本語を話せてすごい、という気持ちを表現する言葉は必ずしも褒め言葉ではない。

「外国人が難しい日本語を話せるはずがない」という偏見の裏返しに捉えられたり、子供をあやすような口調に聞こえバカにされているように思われたりなど、相手を傷つける理由になり得る。

 

「美しい言葉遣いですね。どこで学んだのですか?」「発音がとてもきれいですね」など、相手の日本語のレベルを具体的に褒めよう。

 

2-4.文化や習慣に由来するNGな言動と行動例2つ

どんな国にも伝統の文化や習慣があるが、相手が持つバックグラウンドを心から褒めたい、リスペクトしたいという気持ちがあるならば、褒めるポイントには十分注意する必要がある。

中には、アンコンシャスバイアスに基づいたものがあることを知っておこう。

 

1)箸の使い方が上手ですね

和食や韓国料理などアジア諸国の食文化が、世界中でブームを起こしている。小さな街にも寿司レストランがあったり、テイクアウトの中華料理が人気メニューになったりするほどだ。

 

したがって、外国人観光客でも日常的に箸を使って食事をする人は多く、褒めるポイントにはならない。

日本の文化をリスペクトしてくれている!という気持ちをこめたつもりの言葉かもしれないが、

相手によっては「子供じゃないんだから」と気を悪くさせることがあるので注意しよう。

 

2)タトゥーを入れているんですね

日本社会ではタトゥーに対する反社会的イメージが強く、タトゥーを入れている人を一部施設では入場制限することもある。

したがって、話している相手がタトゥーを入れていることに触れるなら、「タトゥーを入れているんですね」だけ伝えるのはNG。

「タトゥーを入れる人は反社会的」と思われているのかもしれない、と相手の気分を悪くさせることがある。

 

海外では、タトゥーが自己表現の手段だったり、伝統文化だったりする国がある。

自分を美しく見せるための手段として、ポジティブに捉えている人も多い。

「日本ではなかなか見ないデザインです。どこで入れたのですか?」など、タトゥーに触れるなら具体的な話題にすることが望ましい。

 

あわせて読みたい記事

【前編】温泉でタトゥーを容認すべきか?日本人が刺青に対して厳しい理由と外国人の意見

 

3.アンコンシャスバイアスへの対策

アンコンシャスバイアスから生まれる思い込みや無意識の差別をなくし、外国人とより良いコミュニケーションを図るためには、どのようなアクションを起こせばいいだろうか。

ここでは、具体的な対策を見ていこう。

 

【アンコンシャスバイアスに気づく】

まずは自覚すること。自分で気づかないと、アンコンシャスバイアスを止めることは難しい。

自分では気を遣っているつもりだったり、相手を喜ばせるつもりでも、相手には失礼だと思われている言動があると知ろう。

 

【認識を変える努力をする】

行動を変えるためには、認識を変えることが重要だ。

固定観念にとらわれた考え方をしていないか、偏った見方をしていないかなど、外国人に対する自分の言動や行動を常にチェックする習慣を持つと良い。

すれ違いや認識不足を正す良い機会になる。

 

【外国人とコミュニケーションを持つ】

実際のコミュニケーションを通して、相手の感情を読み取ることも疎かにしてはならないポイントだ。

相手の気持ちを推しはかり、先回りして行動するのが日本流のおもてなしかもしれない。

しかし、本当に相手が望んでいることを察するのは、好みや文化的背景など相手のバックグラウンドをよく知らない場合空回りに終わる。

日本語でも良いので、対話して相手の反応や気持ちを汲み取る努力を続けることが重要だ。

 

失礼な言葉を発するかもしれない、と萎縮してしまうと何も話せなくなってしまう。

間違いは正せば良いと心得て、外国人と話すチャンスがあればコミュニケーションをとろう。

まとめ

アンコンシャスバイアスを払拭してインバウンド需要を高めよう

インバウンド増加に伴い、観光スポットの人気都市だけでなく、地方も含めた国内全体が急速に国際化しつつある。
そのため、アンコンシャスバイアスへの対策は喫緊の課題とも言えるだろう。

日本への外国人や外国の文化に慣れていないから、と理由づけしてアンコンシャスバイアスを正当化することは、急速に国際化している日本社会の流れと逆行する。
真のおもてなしを体現するためにできることを、今から始めよう。

【Ehime Kurushima-kaikyo-ohashi Bridges, from Mt. Kiro】【Gunma Carp Streamers, Akaya Lake】【Yamaguchi Farmer in Higashi-ushirobata Rice Terrace】
【Hiroshima Streetscape of Yutakamachi-Mitarai】【Niigata Wakabayashi-tei House】©経済産業省、【表示4.0 国際】ライセンス https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/