ハートランド・ジャパン上期98,400人泊を記録

弊社リベルタ株式会社のインバウンド事業であるHeartland Japan(ハートランド・ジャパン)が98,400人泊(2023年7月現在)の販売実績を達成したことをお知らせ致します。

当社の顧客は主に欧米豪です。主にという意味は、シンガポール、香港、台湾からの誘客も含まれるためです。グループサイズは4人前後でカップルやファミリー、プライベートの小グループが多く、日本に滞在する期間は1週間から10日間、2週間、3週間とバラバラですが、おおむね10日間前後であることが多いです。アメリカは休暇が短いですが、ドイツやフランスなどヨーロッパやオーストラリアは休暇が長いこともあり、滞在日数は長くなります。課題はいまだに訪問先がゴールデンルートに閉じているということです。彼らの日本に対するリテラシーが圧倒的に低く、著名な観光地以外のデスティネーションを知らないということです。この課題解決に弊社は今後もコミットしていきます。

インバウンド産業は、外貨を獲得する産業であるため輸出産業に位置付けられています。しかし、日本のインバウンド産業は、邦貨獲得するドメスティックな産業になってしまっている感が拭えません。行政主導で地域にインバウンドを呼び込む事業が予算化され、地域事業者を育成するように進められてきているのですが、外貨を獲得して事業を回せるプレイヤーが育っていない実情があるのです。結局のところ事業者は、行政が捻出する予算を獲得した時点で業務を終えてしまい、その先にある外貨を獲得することはなく、邦貨(行政の予算)を獲得するだけに留まっているのです。結果、行政は「販売実績を重視します」「出口として実売につなげなさい」と声高に地域の事業者に叫ぶようになってきていますが、その声は、暖簾に腕押しという状況になっています。日本の地域を売っていくといことは、海外で新たな需要を喚起してマーケットを育てていくということであるため、とても難しいものなのです。

そんな中、インバウンド専門の旅行事業として2017年にスタートしたHeartland Japan(ハートランド・ジャパン)。2020年から2022年の3年に及ぶコロナ禍の影響で成長の機会を逃し足踏み状態が長く続いていた当事業ですが、ようやくその闇を脱することができました。 さらにそのうちの26.8%は地方誘客です。

これまでハートランド・ジャパンは、

1)欧米人をターゲットに

2)地方に誘客する

という2つの目標にコミットしてきました。

これは日本政府が目指している方向性と一致します。日本のインバウンド産業はこれまで中国や韓国、台湾、香港などといった東アジア圏を中心に発展して来ました。また日本に来る旅行者は東京・富士山・京都・広島という定番コースにしか出向いていないケースが圧倒的でした。 しかし、日本のインバウンドの入り数を4,000万人、6,000万人、8,000万人と伸ばし、その消費額も増やし、その恩恵をゴールデンルートなどの特定地域だけでなく、地域の隅々まで行き渡らせるための一つの解決策は「欧米人を地方に誘客する」ということが解になります。

欧米(特に欧州)ではアウトドア教育が進んでおり、かつ、環境破壊やオーバーツーリズムを生むマスツーリズムを脱し、受入環境に配慮した旅行形態を楽しめるようにする観光政策などもあり、ファームステイなど自然や田舎をフィールドにした旅行形態に慣れているため、自然の中でウォーキングを楽しむなど体を動かすことを旅先でも求める傾向があります。またビジュアル映えのするところで写真を撮ってSNSにアップして自慢するだけだったり、大型バスで有名どころを周遊するだけの「ザ・観光」ではなく、旅を通じて自分自身を変えたい、人生を豊かに感じたい、地域に貢献したい、などという「旅」をしたいという願望を欧米人は持っています。

「観光」とは、観光地に行ってその土地の光の部分を物見遊山的に表面的に「見る」ことがその言葉からはイメージとして浮かびます。一方で「旅」とは、その土地のストーリーを学び取り、その土地の自然を体で感じ、その土地に住まう人と会話をし、その地域に没入するような体験のことが想起されます。これは英語でいうところのTourist(ツーリスト)とTraveler(トラベラー)との言葉の意味の違いと同じです。地域の光を観るのではなく、地域に没入する。これが真に地域を理解することにつながると目の肥えた志向のホンモノ志向のトラベラーは考えており、旅行にはそういうディープな体験を求めているのです。

多くの場合、観光の場合は、その場所に行くこと(時にそこで記念撮影をしたり、当地のおいしいものを食べること)が目的なので、それで欲求が満たされることになります。

一方「旅」には、なんらの目標なり課題なりのテーマ設定がされており、それに「挑戦」をして、「達成」することも重視される訳です。それが「精神的な満足感」となり人生を豊かに感じさせる要素をなります。成熟した欧米系の旅行者はこうした充実感を旅に求めるのです。なぜか? 旅に出たなら、その土地のことを「より多く感じ」、「より深く記憶に刻みたい」からです。写真だけ撮って終わる「ザ・観光」は次から次へと写真映えスポットを移動をするので、10年後、20年後に振り返ろうとしも、思い出すことすらできないこともあるでしょう。一方で体全体で体験として感じたことは、写真の力を借りずとも思い出すことができます。人に話したくて話したくしかたないですし、何度でも思い出して「あの時はホントに大変だったよね!」と、思い返すことでしょう。怖かったこと、失敗したこと、現地の人に助けられたこと、言葉が通じずに困ったこと・・・それらは何年経っても色褪せることのない記憶となり、何度でも反芻できます。それらはお膳立てされた表面観光ではありません。何らかの「試練」があり、それがあってこそ記憶に深く刻まれる。それが「旅」の醍醐味であり、それが本質的な「旅」の楽しみ方なのです。

このような背景から、弊社が提供するのは表面的な薄い観光ではなく、一生の思い出に残る人生を変えるような旅を提供する会社でありたいと思っていますし、今後は、このような旅行に対する価値観、旅に求める体験は日本や東アジアにも浸透していくと考えています。

欧米の旅行者たちは、旅を通じて自分と向き合いたい、見つめ直したい、新しい自分を発見したい、家族との絆を強くしたい、自分の人生を変えたい、人生を豊かに感じたい、世界を体で感じたい、旅の体験を一生の記憶として刻みたい、などというディープで本質的な欲求を持っており、そこにホンモノの日本らしさを感じます。旅慣れた欧米系のトラベラーたちは、そこにお金を払いたい訳です。

GT(グリーンツーリズム)、CBT(コミュニティベースドツーリズム)、AT(アドベンチャーツーリズム)、RT(レスポンシブルツールズム)、ST(サステナブルツーリズム)などという言葉や定義がたくさん生まれ、その枠組みをいち早く取り入れようとするプレイヤーが多いですが、結局のところ語られていることは本質的にはどれも同じです。「人は人と人のつながりを求める」ということに帰結します。それが人生を豊かに感じさせるからです。人生を豊かに感じさせるのは、人と人のつながりであり、それを手を変え品を変え、感じさせる手法が上記に挙げたようなツーリズムの考え方なのです。環境という切り口で、地域に息づくコミュニティという切り口で、アドベンチャーという切り口で・・・など、訪問先で様々な価値観で生活する人たちとのつながりを感じるための方法論なのです。

上記のようなツーリズムの様々の定義も、結局は「人」に収斂されますので、ガイドの世界で言われるストーリーテリングも結局は「人の営みになぞらえてこそ」初めて有効な手段として相手に伝わるものになります。 人は人に興味があるのです。

「この地域ではどんな人がどんな暮らしをしているのだろう?」「どんな価値観を持っているのだろう?」 「自分と同じような悩みを持っているのかな?」「子どもたちはどんな教育を受けているのだろう?」・・・これが他国を訪れた場合の最大の関心事であり、その土地をわざわざ訪れた意味になります。

弊社は、定番の観光地でなく、地方をフィールドしたアクティブなツアー形態を提供しています。事業はようやく軌道に乗ってきました。 しかし、まだ入り口に立ったばかりです。 コロナ後の数ヶ月で98,400人泊の販売実績を残せたことはそれなりの成果ですが、まだ私たちの目標はそこではありません。

コロナが明けてからこの短期間のうちに平均旅行消費額:457,341円/人、一人一日当たりの旅行消費額:42,759円/人日を記録することができ、政府が掲げる旅行消費額の目標を228.5 %達成することができましたが、地方への宿泊数は依然として2.87泊に留まっています。もちろん政府の目標値である訪日外国人旅行者一人当たりの地方宿泊数の2泊に対しては143.5%の達成率となっていますが、地方が本当にインバウンドの恩恵を受けるレベルには遠く達していないからです。

弊社はアメリカ、デンマーク、オーストラリア、カナダ、ドイツなどからの発地型(弊社の提供するツアーに参加するため現地で予約をして訪日する)のお客様が100%です。しかし、この方々のリクエストは圧倒的にゴールデンルートに閉じた形が主流です。地方の地名は全くと言っていいほど、知られていませんので、せっかく提案をしても地名だけでは顧客には響きません。

日本のインバウンド産業が次のステージに立つためには、日本に対するリテラシーを海外顧客向けに高めていく必要があると感じています。 今後は「場所」を売るのではなく、何ができるか?という「コト」を売ることは今更ながらではありますが、一考の余地がありそうです。

私たちが考えるその手法は、景色が綺麗、写真映えするというだけではなく、そこで自分の中に取り入れられる「ストーリー」であると考えています。地域の伝統芸能や伝統工芸、郷土料理、古道などのトレイル資産、そして街や人の生き様のストーリー。それが没入感を生み、ホンモノ志向の旅行者に刺さるのです。 「体験を通じて地域のストーリーを取り入れること」。これが本質的に求められる体験です。マウンテンバイク、トレッキング、カヤッキング・・・いろいろなアウトドアアクティビティにおいては、その「コースの面白さ」は当然求められます。しかし、そこに付加価値を加えるのは、そのコースのストーリーです。昔、巡礼者が歩いた古道を追体験で歩く、日本海で獲れた新鮮な魚介類を京都に運ぶために使われていた街道をサイクリングで追体験して走るなど、数多あるコースの選択肢の中で選ばれる理由、わざわざそこに足を運ぶ理由は、そのコースが持つストーリーにあります。それが「コースの面白さ x ストーリー=アドベンチャートラベルの質」であり、地域誘客の有効な手段の一つになるのです。

「なぜその土地で、それをわざわざするのか?」

この問いに常に応えられる地域に浸かり込むような「体験」の提供が今後望まれています。

【Ehime Kurushima-kaikyo-ohashi Bridges, from Mt. Kiro】【Gunma Carp Streamers, Akaya Lake】【Yamaguchi Farmer in Higashi-ushirobata Rice Terrace】
【Hiroshima Streetscape of Yutakamachi-Mitarai】【Niigata Wakabayashi-tei House】©経済産業省、【表示4.0 国際】ライセンス https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/