長崎・県北在住スタッフのMayumiです。
先日、長崎県の対馬を巡る2泊3日のFAMツアーに参加しました。
偶然にもその後、某海外メディアの「2026年に行くべき旅先」に長崎が選ばれ、うれしい話題となっています。
今回のツアーでは、トレッキングやシーカヤックなど“強度強め”のアクティビティを体験しながら、海外ゲストへの提案を検証しましたが、久しぶりに訪れた対馬の自然や山岳信仰の残るトレイル、ヤマネコネイチャーウォークなどに触れ、「これはアクティビティ好きの海外ゲストにぴったりだ!」と改めて実感。
対馬は南北82kmの細長い島で、日本で3番目に大きい離島。
島の約89%が山林で、人口は約2.5万人。人口密度は東京 ・ 新宿区の約240分の1。
数字だけでも自然のスケールが伝わります。
韓国までわずか49kmと近く、古代から“海の要”として交易と国防の役割を担ってきた場所でもあります。
7世紀半ば(660年)、百済が滅亡すると、倭国(古代日本)は外敵に備えて対馬を含む北部九州を“国防の最前線”として強化しました。
このとき配置されたのが防人(さきもり)で、遠く東国(現在の関東)から徴収された人々が国境警備にあたっていました。金田城は、そんな彼らが実際に立っていた拠点のひとつです。
海を望む天然の要塞で、古代から近代まで複数の軍事遺構が重なる珍しい場所で城マニアの間では最強の城と言われています。
今回はそんな金田城を“実際に歩いて”体感します。
1日目
まずはSea to Summit方式で浅茅湾(あそうわん)をカヤックで進み金田城の裏手に上陸。
そのまま標高約276メートルの城山の山頂を目指します。
写真は人工物がほとんどない静かな浅茅湾。この日に限って強風で「これは中止か?!」とヒヤッとしましたが、外海に近い区間を抜けると意外にも穏やかで、結果的にはとても気持ちの良いカヤッキングに。

二人乗りカヤックは、前の人がパドルを漕ぐリズムに合わせて後ろの人が頑張ってくれるスタイル。 初心者の私は安心の“前担当”、後ろはベテランの現地ガイドさん。後ろでかなりフォローしてくれていたと思われます。


湾に着くと、カヤックガイドさんが美味しい手作り弁当と、地元の「ろくべえ汁」を用意してくれました。(さつまいも粉のもちもち麺を、鶏や野菜の出汁で煮込んだ対馬の素朴な郷土料理です。)
海風で冷えた体に、この温かい「ろくべえ」がじんわり染みる…。
そして、まげわっぱに詰められた心のこもったお弁当の美味しさといったら…… う、う、旨い…!!

腹ごしらえの後はいよいよ金田城を抱える城山へ入山。
山道には、一の城門・二の城門をはじめ、 見事な保存状態の石垣が点々と残り、当時の“要塞感”がぐっと近くに迫ってきます。

標高276メートルとはいえ、途中階段も多く、日頃パソコン前に張りついている私にはなかなかの試練。息が上がりつつも、ガイドさんは軽やかに興味深い話を挟みながら、私たちを山頂へと導いてくれます。
そして山頂に着くと、ついさっきカヤックで漕いでいた浅茅湾が一望できました。
Sea to Summit を達成した瞬間です。
遠く東国から徴収され家族と離れて国境を守っていた防人(さきもり)は、この景色をどんな気持ちで見ていたんでしょうね。 ロマンを感じずにはいられない城山山頂の眺めでした。

2日目
2日目は白嶽トレッキング。
対馬ならではの山岳信仰に触れる1日です。
まずは洲藻(すも)集落にある白嶽神社でお参りしてからスタート。
神社といっても、芝生の中に古い鳥居と小さな祠がぽつんとあるだけの、とてもシンプルな佇まい。
余計なものがないぶん、かえってスピリチュアルな空気を感じます。よく見ると、神社の背後には白嶽の山頂(雄岳と雌岳)が姿を見せています。
古来より白嶽は聖域とされ、みだりに登ることが許されなかった場所。
そのため、昔の人々はここから山そのものを御神体として拝んでいたそうです。

参道はどこか結界めいていて、鳥居の前の狛犬たちが入口を静かに守っているようにも見えました。
「入るならここからどうぞ」と言われているようで素直に従います。

そしていよいよ、対馬の霊峰・白嶽トレッキング開始です。

標高519メートルと低山ながら、これがなかなかの強敵!
ネットでは“初心者〜中級”と書かれていますが、普段まったく山に登らない私にとっては正直“上級”レベルでした。
こちらは標高220メートル地点の「行者(ぎょうじゃ)の岩屋」
落ちてきそうだったので支えている様子です。(いや、うそですけど。) このあたりまではまだ、こういう遊び心を出す余裕がありました。

そしてこの鳥居が、山の神域への入り口です。 鳥居をくぐると、別世界の急勾配が続く…!!

写真を撮る余裕なんてまったくなく、ここから山頂付近までの写真はゼロ。
等高線を直角に登るような急斜面で、ロッククライミングのような岩場が次から次へと登場。
両手を使いながら、いわゆる“三点確保”で進んでいきます。全員無言。
ようやく山頂が近づき、山頂真下でアドレナリンは全開。
ここで急に風が強くなり、「進む?やめる?」の判断を迫られつつ、岩にはりついて必死で前へ進みます。
意を決して岩の裏手へくるりと回り込むと、さっきまでの強風がピタッとやんだではないですか。
「あれ、ここ神様います…?」

そして、いよいよ白嶽山頂に到着!!
見ての通り山頂はかなり尖っていて、高所が苦手な人は立つのも難しいレベル!!
(そもそも高所恐怖症の人はここまで登らないかもしれませんが…)
それでも、目の前に広がる対馬の絶景は思わず息をのむレベル。

しんどかったけど登ってよかった!!と心から思えた瞬間でした。
そしてふと横を見ると、さっきまではるか上空を飛んでトンビが、今は同じ高さで滑空中。
「猛禽類と同じ目線にいる?!」と、思わずテンションが上がります。
まさに、ここに来た人にしか見られない景色です。
白嶽が“山岳信仰の山”と言われる由縁が、山頂付近にもあります。
それが、祠に“船のイカリ”が祀られていること。
一見すると山とは無関係のようですが、白嶽はどこから見ても目立つため昔は漁師たちが港へ戻る際の目印になっていました。山の見え方で自分たちの位置がわかり、帰る方向を定められたそうです。
漁師にとっても白嶽は“ただの山”ではなく、大切な信仰の対象になっていることがわかります。
いやそれにしても、イカリを担いでこの山を登ったのか?!とそっちにも驚きです。
無事に下山したあとは対馬で唯一の酒蔵・創業105年の白嶽酒造へ立ち寄り。
ここで販売するお酒は一部、長崎や福岡、東京、大阪に出回る事もありますが、対馬島内で消費される事が多く入手しにくいため、白嶽登山の後は必ずよりたいスポットです。
なかでも個人的にドはまりしたのが日本酒で作られた梅酒。
通常はホワイトリカーなどで作られる事が多い梅酒ですが、こちらは採算度外視の日本酒で作られていてこれが衝撃の美味しさ。お土産に1本しか買わなかった事を後悔しています。
宿坊体験の国昌寺
トレッキングで体力を使い果たしたあとは、対馬の中心部・厳原に近い国昌寺のCozyな宿坊でゆったり。「アクティビティ × 宿坊」 は動と静のベストマッチです。


対馬で唯一の宿坊・国昌寺のご住職は、Webデザイナー、ドローンカメラマン、SUPインストラクターなど、お寺の枠を超えて幅広く活動されている、とてもエネルギッシュで人間力のある方。
“対馬のために、自分にできることは全部やる”という姿勢が素晴らしく、「地域おこしは、こういう方がいて初めて前に進むんだな」と強く感じました。(他人事ではない)
お寺もまたサステナブルを考えていく時代です。


3日目
これまでのハードなトレッキングとは打って変わって、3日目は少しゆるやかです。
宿坊で朝のお勤めのあと、少し変わった「終活ワークショップ」(約15~20分)がありました。
自分にとって大切なものを5つほど紙に書き出し、住職が静かに“家族の物語”を読み上げていくという内容です。
最後、自分の中に何が残るのかを考えるワークなのですが、これが想像以上に胸にくる…。
気づけば朝から号泣。
文化によって死生観の受け止め方が変わると思うので、海外の方にどう響くかは未知数。
最近よく耳にする“終活”ですが、日本以外にも似たような考え方や言葉ってあるのかな…?とふと気になりました。

その後は、宿坊で美味しい朝ごはんをいただき、昔の面影が残る石屋根倉庫(しかも今も現役!)を散策して、気持ちのいい朝のひと時を過ごします。

そして向かったのが、小茂田浜神社。
対馬が世界的に注目されるきっかけとなったものに、PS4の“史上最高のゲーム”と評される『ゴースト・オブ・ツシマ』があります。
白黒映像で侍映画のように楽しめる**「黒澤モード」**は海外でも大絶賛。
美しい対馬の風景が描かれたことで、島の存在が一気に世界へ広まりました。
※『ゴーストオブツシマ』の映画化の話が出ていますが正式には未発表。詳細は未定です。
小茂田浜はゲームの背景となった史実・元寇(げんこう)の舞台のひとつで、モンゴル・高麗連合軍の数万人に対し、対馬側はわずか数十人の侍で立ち向かったと伝わる地です。
最前線に立った武将・宗助国(そうすけくに)は、今でも対馬の英雄として祀られ、 毎年10月には甲冑姿の行列が歩く慰霊祭が行われています。

お昼からは対馬名物の蕎麦打ち体験とツシマヤマネコのお話を聞く時間。
対馬のそばは「対州(たいしゅう)そば」と呼ばれ、大陸の原種に近い在来種でとても貴重な蕎麦なんです。濃厚な蕎麦の香りの中、地元のお母さんとの掛け合いを楽しみつつ蕎麦打ち体験に挑みます。
少々蕎麦の太さがバラバラでも問題なし。
手際よくお母さんがゆでて美味しいお蕎麦にしてくれますから。(他力本願)
対馬のもうひとつの名物である「穴子」の天ぷらと共に頂く打ち立てお蕎麦。
なんという贅沢なランチタイム。


次に向かったのは、極めて自然度の高い照葉樹林として国の天然記念物に指定されている
龍良山(たてらやま)原始林のふもとにある「ツシマヤマネコ野生順化ステーション」。
ここは許可がないと原則入れない施設です。 ヤマネコちゃんを自然に返すための大切な施設。
そしてなんと原始林を歩いている途中、同行者の2人が 「今…ヤマネコ見た気がする!」「耳がヤマネコっぽかった!」 と言い出すハプニングが。
私は見逃したのですが、「この森に野生で生息しているのかも…」と思うだけ嬉しい。
ので、“いた”ことにしておきます。
日本では対馬にしかいないツシマヤマネコ。
見られなくてもそこにいてくれるだけでいい。
いつまでもヤマネコが安心して暮らせる豊かな対馬でありますように、と願わずにはいられないのでした。

写真は原始林に鎮座する大きなブナ科の木。
まるで生きているような曲がりくねった根っこ、今にもおじいさんの顔で話し出しそうなこの木の名前は「スダジイ」。

さて、そろそろフライトの時間が近づいてきました。
最後に駆け足で立ち寄ったのは、対馬藩主・宗家の菩提寺「万松院(ばんしょういん)」。
重厚な佇まいが魅力で、毎年10月には約350基の灯篭に明かりがともる「万松院まつり」も行われます。
本当は奥まで見たかったのですが、今回はここでタイムアップ。
一路、ヤマネコ空港から長崎空港へ。約40分の空の旅です。
こうして2泊3日の、対馬の自然・歴史・文化をぎゅっと味わう旅が終了しました。
いや~、しかし濃かった。
これで“下対馬だけ”というのがまた驚きで、中対馬も上対馬もまだ手つかず。
どれだけ対馬が広く奥深い島なのか、今回の旅でよく分かりました。
1回では終わらない対馬。楽しさ、想像以上。
また“しんどさ”を忘れたころに、白嶽に登りに来たいと思います。
最後に、旅の醍醐味でもある「対馬の食」について。
多様な生態系を持つ対馬海流の新鮮な海の幸、在来種の対州そば、対馬ブランドの穴子をはじめ、韓国の影響を受けた地元の焼肉料理「とんちゃん」、何せ食のバラエティがすごい。


宿坊でいただく朝ごはんも驚くほど豪華で、朝からちょっと幸せになれます。
そして何より、地元の居酒屋で“島の日常の味”を体験できるのが最高。


食事面は文句なし。
自然も歴史も濃い対馬ですが、グルメも負けずにしっかり主役級です。
案内してくださったガイドや現地の方々、そして素敵な体験の数々を紹介してくださった長崎県スタッフの方々、皆様にお礼申し上げます。充実の3日間をありがとうございますした!
海を渡るダイナミックなシーカヤックや、山岳信仰が残る聖域へのトレッキング。
対馬には、アクティビティ好きな海外ゲストの冒険心をくすぐる「本物の体験」が溢れていました 。
世界が注目し始めたこの「長崎」のポテンシャルを最大限に引き出し、欧米豪をはじめとする海外のトラベラーを惹きつける魅力的なコンテンツとして磨き上げていくために、私たちはこれからも挑戦を続けてまいります。